ジャボチカバの品種について
ジャボチカバの品種解説
Overview of Jaboticaba Varieties
1. はじめに(日本でよく使われる呼び方 )
ジャボチカバは、ブラジルを中心とする南米原産のフトモモ科果樹で、幹や太い枝に直接花や実を付ける「幹生果」が大きな特徴です。
日本では「大葉」「小葉」「四季なり」などの名称で流通することが多い一方、実際には複数の種・系統・選抜品種・交雑系統が存在します。また、植物分類上の学名は研究の進展によって整理・統合されることがあり、古い文献や園芸流通名と現在の分類が一致しない場合があります。
ここでは、園芸・栽培上よく知られている代表的な系統を中心に整理します。
■日本でよく使われる呼び方
日本では植物学的な分類とは別に、葉の大きさや結実性などから便宜的に呼ばれている名称があります。
・小葉ジャボチカバ
果実色: 黒紫色が中心
果実サイズ: 小~中果
結実性: 成木で良好
特徴: 比較的小さな葉を持つタイプの総称
Sabará系がこの名称で流通することが多いですが、「小葉」という名称だけで品種や種を特定することはできません。
・大葉ジャボチカバ
果実色: 黒紫色が中心
果実サイズ: 中~大果
結実性: 系統による
特徴: 葉や樹体、果実が比較的大きいタイプの総称
PaulistaやAçu系に近いものが含まれることがありますが、日本国内で「大葉」として流通するものすべてが同一系統とは限りません。
・四季なりジャボチカバ
果実色: 赤紫~黒紫色など
果実サイズ: 中果が中心
結実性: 非常に良好なものが多い
特徴: 年に複数回開花・結実しやすいタイプの総称
Red Hybridなどの早生系統が代表的ですが、「四季なり」は特定の品種名ではありません。
栽培温度や樹勢によって開花回数は大きく変化します。
■ジャボチカバの分類について
ジャボチカバの分類は現在も整理が続いています。
古い文献では、
Plinia jaboticaba
Plinia cauliflora
Plinia peruviana
などを別種として扱う例が多く見られますが、現在の植物分類データベースでは、これらの一部を同一種として整理する考え方も採用されています。
また、園芸分野では植物学的な「種」と、地域選抜・品種・交雑系統が同じレベルで名称として使われることがあります。
そのためジャボチカバを見る際には、
植物学上の種名
園芸上の品種・系統名
地域で使われている流通名
を分けて考えることが重要です。
ジャボチカバは非常に変異が大きく、果実の大きさ、色、甘味、酸味、果皮の厚さ、葉の形、結実時期などに大きな違いがあります。
それこそが、ジャボチカバという果樹の大きな魅力のひとつです。
1. Sabará(サバラ)系
*果実色: 黒紫色
*果実サイズ: 小~中果
*結実性: 成木になると良好
*特徴: 小葉で甘味が強く、ブラジルを代表するジャボチカバ系統
ブラジルで最も代表的なジャボチカバの系統のひとつです。
従来は Plinia jaboticaba として扱われることが多く、現在の分類では Plinia cauliflora に含めて整理される場合があります。
果実は比較的小~中型で、完熟すると黒紫色になります。果肉は白色から半透明で、甘味が強く、香りと酸味のバランスにも優れています。
葉は比較的小さく、樹形も比較的まとまりやすい傾向があります。
代表的な名称には、
Sabará
Pingo de Mel
Sabará Gigante
Sabará Cascuda
などがあります。
・Cascuda
果実色: 黒紫色
果実サイズ: 中果程度が中心
結実性: 系統により異なる
特徴: 比較的厚く硬めの果皮を持つタイプ
「Cascuda」はポルトガル語で「皮が厚い」「硬い皮を持つ」といった意味を持ち、厚めの果皮を特徴とする系統に使われる名称です。
「Sabará Cascuda」としてSabará系の選抜品種として扱われる例がある一方、Cascudaという名称は複数の系統で使われる可能性があるため、名称だけで植物学的な種を特定するのは困難です。
2. Paulista/Açu(パウリスタ/アッスー)系
*果実色: 黒紫色
*果実サイズ: 中~大果
*結実性: 成木で良好、Sabaráより晩生傾向のものもある
*特徴: 大葉・強樹勢・大果になりやすい
大葉・大樹・大果になる傾向が強いジャボチカバ群です。
代表的な名称には、
Paulista
Açu Paulista
Ponhema
Canaã-Açu
などがあります。
Sabará系と比較すると葉や果実が大きく、樹勢も強いものが多く見られます。
果実は黒紫色で、大型のものでは直径3cm以上になることもあります。果皮は比較的厚めで、果肉量が多い系統もあります。
日本で古くから「大葉ジャボチカバ」と呼ばれているものの中には、この系統に近いものが含まれていると考えられます。
3. Big One(ビッグワン)
*果実色: 黒紫色
*果実サイズ: 大果
*結実性: 良好とされ、条件により年複数回結実
*特徴: 大果で種子が比較的小さく、果肉割合が高いとされる
日本国内、とくに沖縄などで流通している大果性の選抜系統です。
果実が大きく、条件が良い場合には巨峰程度のサイズになるとされます。
特徴として、
・大果
・種子が比較的小さい
・果肉割合が高い
・結実性が良い
・年に複数回開花・結実することがある
などが知られています。
ただし、Big Oneという名称はブラジルの標準的な植物分類上の品種名としては十分に整理されておらず、その起源や正確な系統関係については不明な点が残っています。
4. Red Hybrid
*果実色: 赤~赤紫色
*果実サイズ: 中果
*結実性: 非常に良好。若木でも結実しやすい
*特徴: 早期結実性と年複数回の開花・結実が大きな特徴
赤~赤紫色の果実を付ける早生系統として世界的に人気の高いジャボチカバです。
一般には、
Plinia cauliflora × Plinia aureana
の交雑系統として知られています。
通常の黒紫色ジャボチカバとは異なり、未熟果から成熟果にかけて赤色系の美しい果皮色を示します。
最大の特徴は早期結実性で、比較的小さな樹でも花を付けることがあります。また、温暖な環境では年に複数回開花・結実する傾向があります。
鉢植えでも比較的栽培しやすく、世界各地で人気の高い系統です。
※アルカリ土壌NG(鉄欠乏出やすい)
5. Escarlate(Scarlet)スカーレット
*果実色: 鮮赤色~赤紫色
*果実サイズ: 中果
*結実性: 良好。早期結実する傾向
*特徴: 赤実系の代表的選抜品種で、果皮色が美しい
赤実系ジャボチカバの代表的な選抜品種のひとつです。
「Escarlate」はポルトガル語で「緋色」「鮮紅色」を意味します。
果実は赤色から赤紫色に熟し、Red Hybridと外観や性質がよく似ています。
特徴として、
・赤~赤紫色の果皮
・早期結実性
・比較的小型の樹でも結実しやすい
・年複数回開花することがある
などがあります。
Red Hybridと近縁、あるいは類似する系統として扱われることがありますが、両者は同一品種とはせず、別個の園芸系統として扱うのが一般的です。
6. Branca(ブランカ/白実)系
*果実色: 緑~黄緑色、淡黄色
*果実サイズ: 中果を中心に系統差あり
*結実性: 良好な系統が多い
*特徴: 完熟しても黒くならない白実・緑実系。甘味が強い
完熟しても果皮が黒紫色にならず、緑色から黄緑色で熟す珍しいジャボチカバです。
代表的には Plinia aureana として知られています。
「Branca」はポルトガル語で「白」を意味します。
果実は黄緑色から淡黄色で、果肉は非常に甘く、酸味が比較的穏やかな傾向があります。
代表的な名称には、
Branca
Branca Lisa
Branca Costata
Branca Rajada
Melancia
などがあります。
同じ「Branca」という名称でも複数の選抜系統が存在するため、果実サイズや果皮の形状、樹勢などには個体差があります。
7. Phitrantha(フィトランサ)系
*果実色: 黄緑~赤紫~黒紫色
*果実サイズ: 中~大果
*結実性: 系統差が大きい
*特徴: 大果性で、果実表面に縦方向の稜や筋を持つものが多い
Plinia phitrantha を中心とする、大果性と特徴的な果形で知られるグループです。
代表的な名称には、
Branca Vinho
Costada
ESALQ
Otto Andersen系
などがあります。
果実が比較的大きく、果皮表面に縦方向の稜や筋が現れるタイプが多く見られます。
「Costada」は「肋のある」「筋のある」といった意味で、この特徴的な果形に由来します。
果実色は系統によって異なり、黄緑色、赤紫色、黒紫色など幅広い変異があります。
大型果や珍しい果形を持つものが多く、ジャボチカバの中でも特に多様性の高いグループです。
8. Coronata(コロナータ)系
*果実色: 黒紫色を中心に系統差あり
*果実サイズ: 大~特大果の系統が多い
*結実性: 系統によって異なる
*特徴: 果実先端部の冠状形態と大果性で知られる
Plinia coronata に含まれるジャボチカバ群です。
「Coroada」「Coronata」は「冠を持つ」という意味があり、果実の先端部に冠状に見える特徴が現れることがあります。
代表的な名称には、
Coroada
Olho de Boi
Coroada da Restinga
Serra Azul
Carijó
などがあります。
大果性の系統が多く、特に「Olho de Boi」は大型果で知られています。
「Olho de Boi」はポルトガル語で「牛の目」という意味で、大きく丸い果実の外観に由来すると考えられています。
果実サイズ、色、果皮の厚さなどに大きな変異があり、ブラジル各地で多様な地域系統が知られています。
9. Trunciflora/De Cabinho(トランクフロラ/デ・カビーニョ)系
*果実色: 黒紫色
*果実サイズ: 中~大果
*結実性: 成木で良好
*特徴: 果実に比較的明瞭な短い果梗が付く
Plinia trunciflora とされるグループです。
一般的なジャボチカバよりも、果実と枝の間に短い果梗が確認しやすいことが特徴です。
「Cabinho」はポルトガル語で「小さな柄」を意味します。
代表的な名称には、
De Cabinho
De Penca
Café
Preta
などがあります。
果実は黒紫色で、果実サイズや風味には系統差があります。
幹に直接実が付く一般的なジャボチカバと比べると、果実がわずかに柄を介して付くため、外観からも比較的判別しやすいグループです。
10. Grimal
*果実色: 黒紫色
*果実サイズ: 大果
*結実性: 成木で良好
*特徴: 大果で多汁、甘味と酸味のバランスに優れるとされる
海外の熱帯果樹愛好家の間で広く知られている大果系ジャボチカバです。
園芸・果樹資料では Plinia spirito-santensis (スピリト・サンテンシス系)として紹介されることがありますが、その植物学的な位置付けについては異なる見解もあります。
Plinia peruviana や Plinia cauliflora に近いグループとして扱われる例もあり、分類上は未整理な部分が残っています。
果実は比較的大きく、黒紫色に熟します。
果肉は多汁で、甘味に加えて適度な酸味と香りを持つことから、海外では評価の高いジャボチカバのひとつです。
ジャボチカバに似た近縁果樹
「ジャボチカバ」の名前で流通する果樹の中には、植物学的にはPlinia属ではないものもあります。
Cabeludinha/Yellow Jaboticaba
果実色: 黄色~黄橙色
果実サイズ: 小~中果
結実性: 成木で良好
特徴: 果皮表面に細かな毛があり、甘酸っぱい黄色果を付ける
学名:Myrciaria glazioviana
黄色から黄橙色の果実を付ける南米原産のフトモモ科果樹です。
果皮表面に細かな毛があることから、ポルトガル語で「小さな毛のあるもの」を意味するCabeludinhaと呼ばれます。
英語圏ではYellow Jaboticabaと呼ばれることがありますが、真正のPlinia属ジャボチカバとは別属です。
甘酸っぱい果肉を持ち、通常のジャボチカバとは見た目も大きく異なります。
Blue Jaboticaba
果実色: 青紫~濃紫色
果実サイズ: 中果
結実性: 成木で良好
特徴: 果実表面の白い果粉によって青みを帯びて見える
学名:Myrciaria vexator
完熟すると青紫色から濃紫色になる果実を付けます。
英語圏ではBlue Jaboticabaと呼ばれますが、こちらもPlinia属ではなくMyrciaria属の近縁果樹です。
果実表面に白い果粉が現れることがあり、青みがかった独特の外観になります。
