ランブータンの育て方
ご家庭でのランブータンの育て方
How to grow
1. 栽培の重要ポイント
ランブータン(Nephelium lappaceum)は、東南アジアを中心に栽培されるムクロジ科の常緑果樹で、ライチやリュウガンに近い仲間です。
ランブータン栽培で特に重要なのは、
①低温に当てない
②乾燥させない
③根を傷めない
④水は必要だが、根を長時間水浸しにしない
この4点です。
熱帯果樹の中でもかなり高温多湿を好む植物です。
2. 温度について
生育適温はおおむね21~35℃です。
・25~32℃前後:非常によく成長する
・20℃前後:生育速度が低下してくる
・15℃前後:かなり生育が鈍くなる
・10℃前後:長期間は避けたい温度域
・5℃前後以下:大きな低温障害・枯死の危険が高くなる
特に重要なのが「最低気温」です。
ランブータンは昼間が暖かくても、夜温が低いと生育が大幅に低下します。したがって本州で栽培する場合、単純に「霜に当てなければ大丈夫」という植物ではありません。
冬季は最低10℃以上、できれば15℃前後以上を維持できる場所での越冬をおすすめします。
幼苗ほど低温の影響を受けやすいため、購入後1~2年程度の小苗は特に注意してください。
■冬越しについて
本州では基本的に、
・鉢植え+室内
・加温温室
・最低温度を確保できるハウス
での越冬をおすすめします。
無加温ハウスだけでの越冬は、地域によっては難しいです。また、冬季は地上部だけでなく「鉢土の温度」にも注意してください。冬にコンクリート床へ鉢を直接置く場合は、発泡スチロール板等を敷いて鉢底を冷やさないようにするとよいでしょう。
3. 日光について
基本的には日当たりを好みます。
ただし、購入直後の小苗や、それまで温室・遮光環境で育てられていた苗を突然真夏の直射日光に出すと葉焼けすることがあります。
特に5~9月に屋外へ移動するときは、
明るい日陰⇒午前中のみ直射日光⇒日当たりのよい場所
というように、1~2週間程度かけて徐々に日光へ慣らしてください。
大きく育った株は十分な日照が必要です。
日照不足では、
・枝が細くなる
・節間が伸びる
・葉色が悪くなる
・将来的に花芽形成や結実が悪くなる
場合があります。
4. 用土について
ランブータンは「水を好む=水はけが悪くてもよい」植物ではありません。
原産地では降水量の多い地域に生育しますが、良好な生育には、肥沃で適度な湿り気がありながら排水のよい土壌が適しています。
土壌pHは弱酸性を好み、目安としてpH5.0~6.5程度がおすすめです。
■鉢植えの配合例
一例として、
・赤玉土(小粒)4
・培養土または腐葉土3
・鹿沼土2
・パーライト等1
程度から始めても構いません。
重要なのは配合そのものより、
「適度な保水性があるが、水を与えたら余分な水が速やかに鉢底から抜けること」
です。
極端に乾燥する砂質用土も、常時ベタベタする粘土質用土も適しません。
5. 水やり
ランブータンは乾燥を嫌います。
春~秋の生育期間中は、土を完全に乾かさないように管理してください。
特に夏の鉢栽培では水切れに注意します。
気温が高く株が大きくなっている場合、朝に水を与えても夕方には乾くことがあります。その場合は朝夕2回の水やりが必要になることもあります。
水を与える際は少量ずつ毎日与えるのではなく、鉢底から水が流れ出るまで十分に与えます。
■水不足の症状
・葉が垂れる
・新芽が伸びない
・葉先から茶色くなる
・新しい葉が小さくなる
・激しい場合は落葉する
ランブータンは一度強く乾燥させると、その後水を与えても葉先枯れや落葉が進むことがあります。
■ただし過湿にも注意
水を好みますが、鉢皿に水を溜めっぱなしにする栽培はおすすめしません。
根が長時間酸欠状態になると根腐れを起こします。
「たくさん水を与えること」と「水浸しにすること」は別物です。
<冬の水やり>
冬は夏と同じ感覚で水を与えないでください。
低温になると樹体の水分消費量が減ります。
土が低温で常時過湿になると根腐れしやすくなるため、
「乾燥させないが、常時びしょ濡れにもしない」
程度に管理します。
特に室温10~15℃程度で越冬させる場合は、水やり回数をかなり減らします。
逆に20℃以上の温室で新芽が動いている株は、冬でも相応の水分を必要とします。
したがって「冬だから○日に1回」ではなく、温度・鉢の重さ・土の乾き方を見ながら判断してください。
6. 植え替えについて
鉢の中に根が回ってきたら、一回り大きな鉢へ植え替えます。
植え替え時期は十分に暖かくなった5~8月頃がおすすめです。
最低気温が15℃以下になるような時期の植え替えはなるべく避けてください。
植え替え後に根が傷んでも、暖かい時期であれば回復しやすいためです。
■植え替え時の注意
ランブータンは植え替え時に根を必要以上に崩さないでください。
健康な苗であれば、「根鉢を大きく崩さず、一回り大きな鉢へ移す」方法が安全です。
古い土を全部落としたり、細根を大量に切除したりする植え替えは、小苗では特に避けてください。
7. 肥料について
ランブータンは生育期には比較的肥料を必要とします。
ただし、鉢植えの幼苗へ大量の肥料を一度に与えるのは禁物です。根を傷める原因になります。
春から秋の生育期に、緩効性の化成肥料や果樹用肥料を少量ずつ定期的に与える方法がおすすめです。
幼木期にはN・P・Kを比較的バランスよく含む肥料を使用し、大きくなってからはカリウムやマグネシウムも不足しないようにします。
目安として、
・窒素(N)
・リン酸(P)
・カリ(K)
・苦土(Mg)
をバランスよく含む肥料を基本とするとよいでしょう。
冬季に15℃以下でほとんど成長していない場合は、基本的に施肥を停止します。
<肥料成分・微量要素不足について>
【窒素(N)不足】
古い葉から全体的に黄緑色になります。
・葉色が薄い
・新芽の伸びが悪い
・葉が小さい
・全体的に成長が遅い
などが目安です。
【カリウム(K)不足】
古い葉の先端や葉縁から黄化・褐変し、生育や果実品質にも影響します。
結実する成木では特に重要な要素です。
【マグネシウム(Mg)不足】
古い葉から症状が出やすく、葉脈を残して葉脈間が黄化する場合があります。
【鉄(Fe)不足】
新しい葉から黄色くなり、葉脈だけが比較的緑色に残る「葉脈間黄化」が特徴です。
肥料そのものに鉄が不足している場合だけでなく、土壌pHが高すぎて鉄を吸収できなくなっている場合があります。
この場合、鉄肥料を追加するだけでなく、用土のpHも確認してください。
■欠乏症を疑う前に
葉が黄色い=肥料不足とは限りません。
・冬の低温
・根腐れ
・水切れ
・植え替えによる根傷み
・高pH
・肥料の与えすぎによる根傷み
でも、肥料不足とよく似た症状が出ます。
特に冬に葉が黄色くなったからといって肥料を追加すると、低温+過湿+高肥料濃度によって、さらに根を傷めることがあります。
まず温度・水分・根の状態を確認してください。
8. 剪定について
幼木のうちは強い剪定は必要ありません。
ある程度成長してから、
・内向き枝
・交差枝
・極端に弱い枝
・枯れ枝
などを整理します。
原産地ではかなり大きくなる樹木なので、鉢植えや温室では早い段階から樹高を抑えることを意識すると管理しやすくなります。
主幹がある程度の高さになったら摘芯し、横枝を発生させて樹冠を作る方法もあります。
温室栽培の場合は「天井まで伸びてから切る」のではなく、若木のうちから低い位置で枝分かれさせると、その後の管理が楽になります。
9. 開花・結実について
ランブータンは、ある程度の樹齢・大きさまで成長すると開花するようになります。
実生苗(種から育てた苗)は、親株とまったく同じ性質になるとは限らず、樹勢や果実の性質、花の性質などにも個体差があります。そのため、実生栽培では開花・結実までの過程も含めて楽しみながら育ててください。
また、ランブータンは受粉の状態によって着果が左右されることがあります。開花しても実付きが悪い場合は、受粉環境を改善したり、複数株を栽培することで結実しやすくなる場合があります。
温室内では訪花昆虫が少なくなるため、開花期にはハチなどの昆虫が出入りできる環境を作ることも結実を助けます。
10. 実生から育てる場合
ランブータンの種子は乾燥に非常に弱いため、果実から取り出した種子は長期間保存せず、なるべく早く播種してください。
種子を乾燥させて保存する一般的な野菜種子のような扱いには向きません。
果肉をきれいに取り除き、水洗いしてから播種します。
用土は清潔で排水性・保水性のあるものを使用します。
発芽中は高温多湿を維持しますが、「高温多湿=常時水浸し」ではありません。
種子周辺が長時間過湿になるとカビや腐敗が発生します。
発芽後もしばらくは高温を維持してください。
特に輸入果実から採取した種子は、輸送・流通時の低温や保存期間等の影響を受けている場合があります。
発根・発芽したからといって必ず正常な苗まで成長するとは限らず、発芽後に生育が停止したり枯死する場合もあります。
11. 病害虫について
日本国内の家庭栽培では、
・ハダニ
・アブラムシ
・カイガラムシ
・コナカイガラムシ
などに注意してください。
特に冬季に室内や温室へ取り込むと、乾燥によってハダニが増えることがあります。
葉の表側だけでなく、定期的に葉裏を確認してください。
カイガラムシ類は枝や葉柄付近にも発生します。発生初期であれば物理的に取り除くこともできます。
高温多湿の環境では病原菌による葉枯れや根腐れ等にも注意します。
<葉先が茶色くなる場合>
ランブータン栽培で比較的よく見られる症状です。
葉先が茶色くなる原因は一つではありません。
主な原因として、
・水切れ
・空気の乾燥
・低温
・根傷み
・肥料濃度が高すぎる
・塩類集積
・植え替え直後
・急激な環境変化
などがあります。
葉先が茶色いからといって、すぐに肥料を追加しないでください。
まず、
①最低温度
②土の乾き方
③鉢底から排水できているか
④最近植え替えをしていないか
⑤肥料を多く与えていないか
を確認します。
<新芽が枯れる・伸びない場合>
特に冬季の場合は、まず低温を疑ってください。
昼間20℃以上あっても、夜間温度が低い環境では生育が大幅に鈍ります。
夏季の場合は、
・根腐れ
・水切れ
・肥料焼け
・ハダニ等の害虫
を確認します。
なお、ランブータンは新芽が一気に伸び、その後しばらく動かないという生育を繰り返すことがあります。
しばらく新芽が伸びないだけで、必ずしも異常とは限りません
12. 本州で育てる場合の年間管理
3~4月
まだ低温に注意してください。屋外へ出すのを急がないようにします。
5月
最低気温が十分高くなったら、徐々に屋外環境へ慣らします。植え替え・施肥もこの頃から開始できます。
6~9月
最もよく成長する時期です。十分な日照・水・肥料を確保します。特に夏の水切れに注意してください。
10月
最低気温を確認しながら屋内・温室への移動準備をします。気温の低下に合わせて施肥量も減らします。
11~2月
越冬期間です。最低温度を確保し、低温時の過湿・肥料過多に注意してください。
13. ランブータン栽培でよくある失敗
①冬の低温
本州栽培で特に注意したいポイントです。
②冬の水の与えすぎ
低温で水をあまり吸わない状態なのに、夏と同じように灌水すると根を傷めます。
③夏の水切れ
葉先枯れ・落葉・生育停止につながります。
④小苗への肥料の与えすぎ
早く大きくしようとして肥料を多くすると、逆に根を傷めることがあります。
⑤植え替え時に根を崩しすぎる
小苗では特に注意してください。
⑥室内へ入れた後のハダニ
冬の暖房環境では乾燥しやすいため、葉裏を定期的に確認します。
14. 最後に
ランブータンは、日本では少し栽培に工夫が必要な熱帯果樹です。
しかし、「冬は暖かく、夏は暑く、水切れさせず、根を健康に保つ」という基本を守ることで、本州でも栽培を楽しむことができます。
特に小苗のうちは「早く大きくしよう」と肥料を多く与えるより、
・十分な温度
・十分な水分
・良好な排水
・適度な日照
を安定して確保することを優先してください。
環境が合えば、新芽がまとまって伸びるようになり、徐々に成長速度も上がってきます。
まずは最初の1~2年間、健康な根としっかりした幹を作ることを目標に育ててみてください。
